平成30年度東京大学卒業式 総長告辞から学ぶ「consummatory」という言葉

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この時期恒例、大学の卒業式における答辞が流れてきたので、どうせまたいつものような分かるような分からないような難解な答辞なのだろうと思って読んでみたら全くそんなことはなく、とても分かりやすく、心に入ってくる答辞だったので、メモとして。

式辞・告辞集 平成30年度東京大学卒業式 総長告辞

前提

この答辞を読まれた東京大学総長の五神さんは、2015年4月に総長に就任し、はじめての入学式で(順調にいけば)この日卒業になる生徒に「多様性を活力とした協働」というメッセージを語ったそう。

それから4年、世界は目まぐるしく変化し、

「多様性を活力とした協働」は4年前とは比べ物にならないほど重要になった

という前提のもとに進められた話。

その上で、東京大学教養学部で社会学を教えられていた見田宗介先生の1973年に発表された『まなざしの地獄』という論考をもとに話を進んでいきます。

論考から学ぶ大切なこと

  • 内なる多様性に目を向けることが、自己と他者との深い相互理解を可能にする
    • 私たち自身誰もが、異質性によって排除される他者の立場になり得るということであり、逆に異質に見える他者の誰もが、じつは互いに共通する側面をもっていて、同じ社会の一員になり得る
  • 個別的で例外的な事例であっても、全体を語る力がある
    • 身近な少数の人の考えをとことん聴き、共感し議論を交わすべき
    • 大量のデータであっても表層的に抽出した結論だけでは社会を的確に捉えたものにならない
    • 他者との交流はエネルギーがいるが、違った意見や好みを持っている人と意識的に話すことは、そのエネルギーに見合うものを得られるはず。

ポスト平成社会における多様性尊重の意義

見田先生の『現代社会はどこに向かうか』という最新刊の中で、語られている3つの規準。

1.positive

  • 今は存在していないかもしれない、真に肯定できるものを前向きにつくり出していく
  • 現在あるものをそのまま受容し承認することではない

2.diverse

多様性を尊重する

3.consummatory

  • 私達が行う現在の活動について、未来の目的のための手段として捉えるのではなく、活動それ自体を楽しみ、心を躍らせるためのものと捉えるということ
  • 「手段的」「道具的」といった認識とは反対の境地

positiveの定義もいいと思ったし、consummatoryという言葉は知らなかったけど、良い言葉だと思った。

「ポスト平成」の時代に必要なこと

一人一人が本当に心を躍らせることのできる理想を探し、その経験や感覚を大切にしながら、同時に他の人の楽しさをも尊重して生きていくべき時代

であり、
「自分は今、心躍らせることのできる仕事や活動をしているのか」という問いかけに対し、

そのような問いかけを、自分のみならず、他の人にも投げかけ、ここでいうconsummatoryな感覚を分かちあってほしいと思います。自分も他者もそれぞれに、ともに心躍らせている、そのような質の高い「共感」こそが、新しい社会を望ましい方向に向かわせる推進力になると私は考えます。全員が一つの幸福に向かうのではなく、多様な幸福が共存し、緩やかに結合する。そうした社会のあり方を、まさにともに心躍らせる活動として模索してください。それが「多様性を活力とした協働」なのです。

ということを意識してほしいというメッセージ。
3つの規準が、現在の環境においてもとても大事だなぁと思うし、環境にかかわらずみんな意識すべきことなんだなと思った。

こんなメモだけ残すとただの意識高い人になってしまうけど、consummatoryという言葉だったり全体的な考えが良いなと思ったので、ただのメモに。

余談だけど、読む前はこういう長い答辞って耳で聞いても覚えてられないと思ったけど、この素晴らしい内容なら、覚えていられるかもしれないというくらい良かった。
何より、時代を意識してなのか、こういう追いかけ方ができるように公開されているのが素晴らしかった。

でも、ここにいた人たちは聞いてるだけで理解できたのかな、どうだろう。

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